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## 姉騎士と秘め事

金色の髪を風になびかせ、凛々しい甲冑に身を包んだ姉、セレフィナは、王国でも指折りの騎士だった。その剣技は誰にも劣らず、どんな困難な任務も遂行してきた。しかし、そんな彼女にも、人には言えない秘密があった。それは、毎月一度、弟である僕にだけ見せる、彼女のもう一つの顔だった。

「今日も遅くまでご苦労様、セレフィナ姉さん」

訓練場から戻ってきた姉に、僕は温かいハーブティーを差し出した。夕暮れ時の訓練場は、汗と鉄の匂いが混じり合い、厳かな雰囲気に包まれていた。セレフィナは、その顔に疲労の色を浮かべながらも、僕に微笑みかけた。

「ありがとう、ロレンツ。今日も厳しい訓練だったわ」

彼女の言葉には、隠しきれない疲労と、それ以上に誇らしげな響きがあった。王国を守るという重責を担う彼女にとって、訓練は日常であり、生きがいでもあった。

「姉さんの頑張りは、みんなの希望です」

僕の言葉に、セレフィナは少し照れたように首を傾けた。

「それほどでもないわ。でも、あなたの言葉は嬉しいわね」

夜が更け、城下町が静寂に包まれる頃、僕たちの部屋は、昼間の厳かな雰囲気とは一転して、秘密の隠れ家へと姿を変える。セレフィナは、重厚な甲冑を脱ぎ捨て、柔らかな絹のガウンを纏った。しかし、その凛々しい姿は、どこか儚げな美しさを帯びていた。

「ロレンツ、今日の調子はどう？」

彼女は僕にそう問いかけ、ベッドに腰掛けた。その瞳には、昼間の騎士としての威厳は消え、柔らかな姉の顔が宿っていた。

「姉さんこそ、今日はお疲れ様でした」

僕は、彼女の傍らに座り、そっとその肩に手を置いた。彼女の体は、激しい訓練のせいで、まだ強張っているように感じられた。

「大丈夫、少し休めば元気になるわ」

セレフィナはそう言いながら、僕の手を握った。その手は、剣を握りしめ続けたせいで、少し荒れていた。

「姉さん、何か辛いことはありませんか？」

僕の問いに、セレフィナは一度目を伏せた。

「辛いこと、ね…。騎士としての責務は、決して楽ではないわ。でも、それ以上に、私自身の身体が…」

彼女の言葉は、そこで途切れた。いつもは力強い彼女の横顔が、今は不安げに見えた。

「身体のことですか？」

僕は、彼女の言葉の続きを促した。彼女が悩んでいることを、僕は知っていた。それは、彼女が騎士としての活動を続ける上で、常に抱えている秘密だった。

「ええ…最近、また調子が悪くて。お腹が張って、苦しいの」

セレフィナは、そう言ってそっとお腹に手を当てた。彼女の顔は、苦痛に歪んでいた。

「姉さん、辛いなら無理しないでください」

僕は、心配でたまらなかった。彼女は、この秘密のために、いつも身体と戦っている。

「ありがとう、ロレンツ。でも、騎士として、弱みは見せられないの」

彼女は、そう言って無理に微笑んだ。しかし、その瞳の奥には、隠しきれない苦悩が滲んでいた。

「姉さん、僕にできることはありますか？」

僕は、彼女の力になりたかった。彼女の苦しみを、少しでも和らげてあげたいと思った。

「ロレンツ…あなたに、お願いがあるの」

セレフィナは、僕の顔をじっと見つめた。その瞳は、普段の騎士としての鋭さとは全く違う、甘く、そして頼りなげな輝きを放っていた。

「何でも言ってください」

僕は、彼女の言葉を待った。

「実はね…以前、ある文献で、身体の不調を和らげる方法を見たことがあるの。それは…」

セレフィナは、そこで一度言葉を区切った。彼女の顔は、さらに赤みを増していた。

「それは…浣腸、というものらしいわ。その…排便を促すことで、身体の不調が改善される、と」

彼女の言葉に、僕は少し戸惑った。しかし、彼女が苦しんでいるのなら、どんな方法でも試すべきだと思った。

「姉さん、それを僕に…？」

「ええ…その…あなたに、手伝ってほしいの。私一人では、どうしても…」

セレフィナは、そう言って俯いた。その姿は、普段の凛々しい騎士の姿からは想像もできないほど、か弱く見えた。

「姉さん、僕にできるなら、喜んで」

僕は、彼女の頼みを、迷いなく受け入れた。彼女が苦しんでいるのなら、僕が彼女の支えにならなければならない。

「ありがとう、ロレンツ…本当に、ありがとう」

セレフィナは、そう言って顔を上げた。その瞳には、感謝の光が溢れていた。

僕は、彼女の言葉に従い、温かい水と、彼女が用意した薬液を準備した。セレフィナは、少し緊張した面持ちで、僕の横に横たわった。

「大丈夫よ、ロレンツ。あなたなら、きっとできるわ」

彼女は、そう自分に言い聞かせるように言った。僕は、彼女の言葉に勇気をもらい、ゆっくりと、しかし確実に、彼女の体へと道具を進めた。

最初は、少し戸惑いもあった。しかし、彼女の苦しみを和らげたい、という一心で、僕は冷静さを保とうとした。セレフィナは、時折小さく息を漏らすだけで、何も言わなかった。ただ、僕の手を強く握りしめていた。

やがて、薬液が体に入ると、セレフィナはくすぐったそうに、そして少し苦しそうに身じろぎした。その様子は、普段の彼女からは想像もできないほど、幼く、そして魅惑的だった。

「姉さん、大丈夫ですか？」

「…ええ…少し…」

彼女の言葉は、かすかに震えていた。僕は、彼女の顔を覗き込み、優しく微笑みかけた。

「もうすぐです。頑張りましょう」

僕の言葉に、セレフィナは少しだけ安堵したように見えた。そして、しばらくすると、彼女の体は、徐々にリラックスし始めた。

「…ふぅ…」

彼女が、満足げなため息をついた時、僕は、彼女の身体が、本来の調子を取り戻しつつあるのを感じた。

「姉さん、もう大丈夫ですよ」

僕は、優しく彼女の体を拭いた。セレフィナは、ゆっくりと起き上がり、僕に微笑みかけた。

「ありがとう、ロレンツ。本当に、助かったわ」

彼女の顔には、先ほどまでの苦痛の色は消え、穏やかな安堵感が広がっていた。

「姉さんが元気になられたなら、僕も嬉しいです」

僕は、彼女の頬にそっと触れた。彼女の肌は、いつものように滑らかで、温かかった。

「あなたの存在が、私にとってどれほど大きいか、改めて感じているわ」

セレフィナは、そう言って僕の肩に頭を預けた。その体温が、僕の胸にじんわりと伝わってくる。

「僕も、姉さんの弟でいられて、幸せです」

僕たちは、しばらくの間、静かに寄り添っていた。夜の静寂の中、二人の間には、言葉にならない絆が、ゆっくりと育まれていた。

この秘密の夜が、セレフィナにとって、そして僕にとっても、どれほど大切な時間であるか、言葉で言い表すことはできない。王国を守る姉の、もう一つの顔。それは、彼女の強さと、そして、彼女の弱さを、僕だけが知っている、かけがえのない宝物なのだ。

この後も、セレフィナは定期的に、僕にこの「秘め事」を求めてくるだろう。そして僕は、いつまでも、姉の騎士であり、そして、彼女の秘密を守る者として、そばにいることを誓う。彼女の笑顔が、いつまでも僕たちの希望であり続けるように。