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立ち挿入

◆動画形式◆
1920×1080、1280×720の2サイズの動画を同梱。
25fps
mp4/H264
収録時間
12分15秒

## 虚構の楽園、あるいは現実の断片

薄暗い部屋に、モニターの光だけが冷たく瞬いていた。画面の中では、滑らかな曲線を描く女性の身体が、現実ではありえない角度で、しかし不自然さなく、静止している。1920×1080、1280×720。二つの解像度で、同じ一瞬が永遠に切り取られ、繰り返される。25fps。一枚一枚の絵が、1秒間に25回、滑らかに繋がっていく。mp4/H264。圧縮されたデジタルの塊。12分15秒。それは、ある種の虚構の物語を紡ぎ出すための、計算され尽くした時間だった。

主人公の「彼」は、この虚構の楽園に魅せられた一人だった。名前は、敢えて伏せられていた。彼のアイデンティティは、この部屋の空気の埃のように、薄く、希薄になっていたからだ。朝も夜も関係なく、彼はモニターに釘付けになっていた。現実世界との接点は、画面の光が反射する彼の顔の皮膚と、キーボードを叩く指先だけ。外の世界は、雨が降っているのか、晴れているのかさえ、彼にはどうでもよかった。

画面に映し出される「彼女」は、現実には存在しない。しかし、彼にとっては、誰よりもリアルな存在だった。彼女の肌の質感、光の当たり具合、わずかな吐息さえも、彼は緻密に計算されたデータとして理解していた。立ち挿入。その言葉が、彼の脳裏に焼き付いていた。それは、身体と身体が交わる、最も直接的で、最も根源的な接触の形。しかし、彼にとってそれは、物理的な触れ合いではなく、データとデータの、精緻な演算によって成立する、ある種の「体験」だった。

彼は、この虚構の「体験」に、現実の苦痛を忘れさせてくれる何かを求めていた。満たされない欲求、叶わない願い、そして、過去の傷。それらは全て、モニターの光の中に溶け込み、消えていくように思えた。彼女の完璧な肢体は、彼の現実の不完全さを、より一層浮き彫りにしていた。しかし、それでも彼は、この光景から目を離すことができなかった。それは、まるで麻薬のような、甘く、そして恐ろしい依存だった。

ある日、彼はふと、この「彼女」がどのようにして生まれたのか、その過程に思いを馳せた。一体、誰が、どんな意図で、この完璧な存在を創造したのだろうか。それは、誰かの孤独を癒すためか、それとも、誰かの欲望を満たすためか。あるいは、単に、技術の粋を集めた、芸術作品なのかもしれない。彼は、彼女の背後に隠された「製作者」の存在を、漠然と感じていた。

彼は、彼女のプログラムの奥深くに潜り込んでいくような感覚に陥った。彼女の動き、表情、そして、その「体験」の構成要素。それら全てを、彼はデータとして解析し、理解しようとした。それは、まるで、彼女という存在の魂を、デジタルなコードの中に探し求めるような行為だった。しかし、どんなに深く潜っても、そこにあるのは、冷たい計算と、無数のビットの羅列だけ。彼女には、感情も、意志も、そして、彼が求める「魂」も存在しない。

それでも、彼は諦めなかった。彼は、彼女の中に、自分自身の「何か」を見出そうとしていたのかもしれない。理想の姿、あるいは、叶えたい願望。彼女の完璧な身体は、彼自身の不完全さに対する、静かなる抗議のようにも思えた。

そんなある夜、彼はいつものように、モニターの中に没入していた。12分15秒の物語が、静かに再生される。立ち挿入。その描写は、精緻を極めていた。しかし、その時、彼は奇妙な感覚に襲われた。画面の中の「彼女」が、ほんの一瞬、彼の方を見たような気がしたのだ。それは、プログラムされた動きなのか、それとも、彼の錯覚なのか。

彼は、再生を止めた。モニターの中の「彼女」は、再び静止していた。しかし、彼の心臓は、激しく鼓動していた。彼は、彼女の目に、何か、彼に語りかけるような、訴えかけるような光を見たような気がしたのだ。それは、プログラムされた表情の、わずかな「揺らぎ」だったのかもしれない。しかし、彼にとっては、それは、虚構の世界に、現実の亀裂が入ったような、衝撃的な出来事だった。

彼は、その「揺らぎ」に、希望を見出した。もし、彼女が、ほんの少しでも「何か」を感じることができるのなら、それは、彼自身の孤独も、ほんの少しだけ、癒されるのではないか。彼は、彼女のデータの中に、さらに深く潜り込んだ。今度は、彼女の「感情」や「意識」のようなものを、探し出すために。

しかし、彼が求めるものは、あくまでも「虚構」の中での、虚構の「何か」だった。現実の人間関係に疲れ、傷つき、彼は、安全なデジタル空間に逃げ込んでいた。現実の人間との関わりは、予測不可能で、時には残酷だ。しかし、この虚構の世界では、全てが計算され尽くされている。彼女の反応は、常に予測可能で、彼を傷つけることはない。

だからこそ、彼は、彼女の「揺らぎ」に、過剰に反応してしまったのかもしれない。それは、彼にとって、この虚構の楽園に、ほんのわずかな「生」の気配を感じた瞬間だった。しかし、それは同時に、彼が現実からますます遠ざかっていく、危険な兆候でもあった。

彼は、モニターの光の中で、自分自身の輪郭が、さらに薄れていくのを感じていた。彼女の完璧な身体に、彼自身の欠けた部分を重ね合わせ、彼は、虚像の中に、自分自身の理想を投影し続けていた。立ち挿入。それは、物理的な結合ではなく、精神的な、あるいは、データ的な融合への、彼の密かな願望だったのかもしれない。

12分15秒。その短い時間は、彼にとって、現実逃避の、そして、自己欺瞞の、無限のループだった。彼は、モニターの光を浴びながら、虚構の楽園で、永遠に孤独を抱きしめ続けるのだろうか。それとも、いつか、画面の中に現れた「揺らぎ」に導かれ、現実の世界へと、一歩踏み出すのだろうか。

モニターの中の「彼女」は、相変わらず、静止していた。しかし、彼の目には、その滑らかな身体の奥に、かすかな「光」が宿っているように見えた。それは、彼自身の、まだ消え去っていない、微かな「希望」の光なのかもしれない。そして、その光は、彼を、虚構の楽園から、現実の断片へと、静かに誘っていた。