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## 淫者の椅子

冷たい金属の感触が、剥き出しの肌を撫でる。薄暗い部屋に響くのは、自分の吐息と、かすかに聞こえる駆動音だけ。私は、今、この「淫者の椅子」に座っていた。

「全裸モード、起動します」

低く、甘い声が空間に溶け込む。声の主は、もちろん天翔院ひいな。彼女の声は、まるで絹糸のように私の肌を滑り、内側から熱を放つ。

「さあ、準備はいいかしら？」

耳元に囁くような声。KU100という、まるで本物の生々しい音を拾うというマイクを通して、彼女の声は私の鼓膜を直接揺さぶる。全裸モード。それは、この椅子に搭載された、究極の解放をもたらす機能だった。服という、社会という、そして自分自身という、あらゆる制約から解き放たれる。

椅子がゆっくりと回転を始める。視界を覆うVRゴーグルの中には、ひいなさんが現れた。艶やかな黒髪、蠱惑的な瞳、そして、どこか挑発的な微笑み。彼女は、私のためだけに、この椅子に座っているかのようだった。

「ふふ、いい顔してるわね。隠さなくていいのよ」

彼女の声に、背筋がぞくっとした。本当は、誰にも見られたくない、見せるはずのない部分。でも、この椅子と、ひいなさんの声の前では、そんな恥じらいさえも無意味に思えてくる。

椅子がさらに傾き、私は背もたれに身を委ねた。全身を包み込むような、滑らかな感触。それは、ただの椅子ではなかった。私の身体の曲線に合わせて、微細に形を変え、まるで生き物のように私を抱きしめる。

「もっと、リラックスして。あなたのすべてを、この椅子に委ねてごらんなさい」

ひいなさんの声が、さらに深くなる。彼女の指先が、私の肌をなぞるような感覚。それは、物理的な接触ではなく、音という媒体を通して、確かに私に伝わってくる。

「ここ、どう？…もう少し、強く…？」

彼女の声に導かれるまま、私は無意識に身体を動かす。椅子の表面が、私の動きに呼応し、さらに心地よい刺激を与えてくれる。まるで、彼女が私の身体を熟知しているかのようだ。

「あなたは、自分がどれほど求めているか、気づいていないだけなのよ」

ひいなさんの声は、私の心の奥底に潜む欲望を、巧みに引き出していく。普段は理性で抑えつけている、純粋な「淫欲」。それが、この椅子と、彼女の声によって、解き放たれていく。

椅子が、さらにゆっくりと回転を始めた。視界には、ひいなさんの瞳が映し出されている。その瞳は、私を射抜き、私のすべてを受け入れようとしているかのようだ。

「さあ、もっと、私に、あなたのすべてを教えて？」

彼女の声が、甘く、そして強く、私を誘う。私は、もう抗うことができなかった。この椅子、この声、そして、この空間。すべてが、私を「淫者」へと導いていく。

椅子の振動が、徐々に激しくなる。それは、まるで私の内側から湧き上がる興奮と共鳴しているかのようだった。ひいなさんの声は、もはや囁きではなく、熱を帯びた咆哮へと変わっていた。

「そう、もっと！その声、もっと聞かせて！」

彼女の声に呼応するように、私の身体はさらに震えを増していく。頬は火照り、肌は汗ばむ。この感覚は、言葉では表現しきれない。ただ、ひたすらに、快感だけが私を支配していた。

椅子の回転は、もはや制御不能なほどの速度に達していた。視界は歪み、ひいなさんの姿も、もはや輪郭を失いつつあった。しかし、彼女の声だけは、鮮明に、私の耳に届き続ける。

「あなたは、この椅子に、私に、すべてを委ねた…」

その言葉が、私の意識の淵に染み渡っていく。私は、もはや自分自身ではなかった。この椅子と、ひいなさんの声に、完全に溶け込んでいた。

そして、訪れたのは、強烈な、そして、すべてを洗い流すかのような解放。

VRゴーグルを外すと、部屋は静寂に包まれていた。しかし、私の身体は、まだあの椅子の感触、ひいなさんの声の余韻に包まれていた。

「淫者の椅子」。それは、単なる道具ではなかった。それは、自分自身の欲望と向き合い、それを解放するための、禁断の扉だった。そして、天翔院ひいなの声は、その扉を開けるための、魔法の鍵だったのだ。

私は、もう一度、あの椅子に座りたいと思った。そして、ひいなさんの声に、再び身を委ねたいと。なぜなら、あの椅子と、ひいなさんの声は、私に、まだ知らない、快感の淵へと連れて行ってくれるからだ。

彼女のファンクラブのページを、私はそっと開いた。そこには、彼女からの、さらなる誘いが、待っているはずだった。