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## 媚薬の甘い罠：禁断の果実

「ラクして稼ごう」――その言葉に、私の心は軽やかに踊った。大学の学費、一人暮らしの家賃、そして何より、憧れのブランドバッグを手に入れるための資金。そんな甘い誘惑に導かれて、私は怪しげな治験バイトの募集に飛びついた。

「最新の媚薬、その効果を検証するモニターを募集します。高収入、短期間。副作用の心配はありません。」

怪しさはあった。しかし、経済的な困窮は私を大胆にさせた。もしものことがあっても、このバイトで得られる金額なら、きっと何とかなるだろう。そう自分に言い聞かせ、私は指定されたビルの一室へと足を踏み入れた。

部屋は薄暗く、独特の甘い香りが充満していた。そこにいたのは、私と同じように「ラクして稼ぐ」ことを夢見たであろう、数人の若い女性たち。そして、白衣を着た怪しげな雰囲気の男性――医師らしき人物だった。

「皆さん、ようこそ。これから皆さんに、最新の媚薬を投与してもらいます。これは、人々の愛を深める、画期的な薬です。皆さんの協力が、この薬を世に送り出すため、不可欠なのです。」

そう言って、彼は小さなカプセルを差し出した。キラキラと輝く、まるで宝石のようなカプセル。その輝きに、私の疑念は少しずつ薄れていった。

「ただし、この薬には、少しだけ…変わった副作用があります。それは…」

医師はそこで言葉を区切り、ニヤリと笑った。その笑みに、私は言いようのない不安を感じた。

「…性的興奮が、通常よりも遥かに高まるというものです。これは、薬の効果を最大限に引き出すために必要なプロセスです。皆さんは、その興奮を抑える必要はありません。むしろ、解放してください。」

「解放…？」

私の声は、甘い香りに霞んでしまった。

カプセルを飲み込んでから、数分。最初は何も起こらなかった。ただ、胸の奥が少しだけ熱くなるような、そんな微かな感覚。しかし、それはすぐに強烈な熱へと変わっていった。

体内を駆け巡る、抗えない衝動。肌が粟立ち、全身が痺れるような感覚。まるで、内側から燃え上がる炎に焼かれているようだった。理性は、その炎の前ではあまりにも無力だった。

「…あ…」

私の口から、思わず声が漏れる。隣にいた女性も、同じように呻き声を上げていた。

「やはり、効果は抜群のようですね。」

医師の声が、遠くから聞こえてくる。彼は、私たちの変化を満足そうに眺めていた。

その時、部屋の扉が開いた。そこに立っていたのは、鍛え上げられた肉体を持つ、一人の男性。彼は、医師の指示を受けるように、ゆっくりとこちらに歩み寄ってきた。

「さあ、皆さん。この男性に、あなたたちの魅力を存分に発揮してください。この薬は、あなたたちを、より…魅力的にします。」

医師の言葉に、私は従うしかなかった。いや、従うというよりも、抗えない力に突き動かされていた。私の体は、もはや私の意志とは無関係に、その男性へと引き寄せられていく。

彼が私の前に立つ。その逞しい腕に抱き寄せられ、彼の熱い息遣いが私の肌に触れる。一瞬の迷いも、抵抗も、そこにはなかった。ただ、湧き上がる歓喜と、それに応えようとする衝動だけがあった。

「…あ、ああ…」

彼の指が私の服を滑らせ、肌に触れる。その感触は、私が今まで経験したことのないほどの快感をもたらした。私の体は、彼の全てを受け入れる準備ができていた。

それは、まるで禁断の果実を味わうような、甘く、そして危険な瞬間だった。媚薬は、私の理性を完全に奪い去り、ただ快楽だけを求める獣へと変えてしまった。

「もっと…」

私の口から漏れるのは、そんな貪欲な言葉ばかり。彼の愛情表現は、私をさらに深い快楽の淵へと沈めていく。彼の体温、彼の匂い、彼の全てが、私を狂わせた。

「…だめ…もう…」

しかし、私の体は、彼の激しい愛情表現に、悲鳴を上げていた。もはや、快楽というよりも、耐え難いほどの興奮と、それに伴う虚無感が私を襲っていた。

彼は、私の叫びを聞きながらも、手を緩めることはなかった。むしろ、私の反応を楽しむかのように、さらに激しく私を求めた。

「…もっと…もっと…」

私の体は、最後の力を振り絞るかのように、彼に応えようとした。しかし、その度に、私の「内側」は空っぽになっていくような感覚に襲われた。

やがて、彼の激しい愛情表現が終わりを迎えた。私は、床に倒れ込むようにして、荒い息をついた。体は鉛のように重く、意識は朦朧としていた。

「…すごい…」

隣にいた女性が、かすれた声で呟いた。私も、同じ気持ちだった。しかし、それは快感からくる「すごい」ではなく、あまりにも強烈な体験への、畏敬の念に近い「すごい」だった。

医師は、満足そうに頷いた。

「素晴らしい。皆さんの協力のおかげで、この薬の真価が証明されました。報酬は、後ほどお支払いします。」

報酬…。その言葉を聞きながら、私は自分の体が、まるで空っぽの器になったような感覚に襲われていた。あの時、彼が私に与えてくれたものは、確かに強烈な快感だった。しかし、それは一時的なものであり、私の「内側」を、それ以上に空虚にしていた。

部屋を出て、夜の街を一人で歩いた。肌には、まだ彼の熱が残っているような気がした。しかし、それはもう、私を熱くするものではなかった。むしろ、冷たい虚無感だけが、私を包み込んでいた。

「ラクして稼ごう」――その甘い誘惑は、私を快楽の淵に突き落とし、そして、全てを奪い去った。これから、私はどうなってしまうのだろうか。あの夜の記憶は、私から、かけがえのない「何か」を奪い去ってしまったような気がしてならなかった。

この体験が、私に何をもたらすのか、それはまだ分からない。しかし、私は、もう二度と、あの甘い香りと、あの怪しげな医師の顔を忘れることはないだろう。そして、あの夜、快楽の果てに感じた、深い虚無感も。