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学生時代からの恋人であった妻が、最近、何かおかしい。

留守の間に何か秘密があると思った私は暗視機能付きのカメラで寝室を盗撮してみることにした・・・。


音声

 「佐野俊英があなたの専用原画マンになります」

cv:紅月ことね


 この作品は「佐野俊英があなたの専用原画マンになります」を使用して作成された作品です。

冷たい風が窓を叩く音だけが、静寂な部屋に響いていた。僕は暗闇の中、息を殺し、モニターに映し出される映像を見つめていた。そこには、寝息を立てて眠る妻、美咲の姿があった。暗視カメラの緑色の光が、彼女の寝顔に淡く照り映える。

美咲と僕は大学時代から付き合っており、5年前に入籍した。いつも明るく、笑顔の絶えない彼女だった。しかし、ここ数ヶ月、何かが違っていた。帰宅時間が遅くなったかと思えば、携帯を肌身離さず持ち歩き、頻繁に誰かとメッセージのやり取りをしている。その内容を覗き見ようとしたこともあったが、パスワードで厳重に守られており、何も掴めなかった。

彼女の変化に、嫉妬と不安が募っていった。浮気ではないかと疑い始めたのだ。その疑念が、僕をこの愚行へと駆り立てた。暗視カメラを設置したのは、数日前。留守中に何か秘密の行動を取っていないか、確認するためだった。

モニターの映像は、一晩中回し続けていた。だが、特別な出来事らしいものは何も映っていなかった。美咲は、ただ眠り、朝になるといつも通りに出勤していった。それでも、僕の胸の奥底にある疑念は晴れなかった。何かを隠している、そう確信していた。

数日後、再び暗視カメラを回し、仕事から遅く帰ってきた。美咲は既に寝ており、静かに寝室へ入った。僕はカメラの映像を確認しながら、ゆっくりと彼女の隣に横になった。彼女の呼吸を感じながら、彼女の温もりを感じながら、それでも疑念は消えなかった。

数日後、いつものように朝、美咲が目を覚ます前にカメラの映像を確認した。すると、今までとは違う映像が映っていた。美咲が、何かを手に取り、それを慎重に隠している様子が映っていた。その様子は、明らかに不自然で、何かを隠蔽しようとしているように見えた。

僕は心臓がドキドキするのを抑えきれず、その映像を繰り返し再生した。美咲が隠したものは、小さな封筒だった。薄くて、封緘されていない。

その日の夜、美咲が眠っている間に、僕はその封筒をそっと取り出した。封筒の中には、一枚の絵葉書が入っていた。美しい風景画、それは…僕が以前、美咲と旅行した時の場所を描いたものだった。しかし、ただの風景画ではない。絵葉書の隅には、小さな文字で「佐野俊英があなたの専用原画マンになります」と書かれていた。

その言葉に、僕は言葉を失った。「佐野俊英」…その名前は聞いたことがなかった。美咲が誰かと繋がっていることは間違いない。しかし、それは浮気とは違う、何か別の関係であることを予感した。

次の日、僕は美咲に絵葉書を見せた。彼女は驚いた表情を見せた後、涙を浮かべながらすべてを打ち明けた。

佐野俊英は、美咲が長年抱いていた夢、イラストレーターになるという夢を叶えるために出会った人物だった。彼は、美咲に才能を見出し、彼女のために原画を描く機会を与えてくれたのだ。絵葉書は、佐野からのメッセージ、そして彼女の夢を応援する証だった。

美咲は、彼と連絡を取り合っていること、夢を追いかけていることを、僕に打ち明けられずにいた。自分の夢を応援してくれないのではないか、心配していたのだ。そして、その秘密を隠すために、いつも以上に慎重になり、携帯を肌身離さず持ち歩き、誰かと連絡を取り合っていたのだ。

彼女の言葉に、僕は自分の愚かさを痛感した。暗視カメラで盗撮する行為、そして、自分の疑念を確かめるために、彼女を監視していたこと。すべてが、彼女の夢を応援するのではなく、逆に彼女を傷つけていたのだ。

「ごめん、美咲。本当にごめん…」

僕は、美咲を抱きしめ、謝った。そして、彼女の夢を、そして彼女自身を、心から応援すると誓った。彼女の夢は、僕にとっての彼女の夢であり、僕の夢でもあると気がついたのだ。

その日から、僕は美咲の夢をサポートすることにした。彼女の作品を一緒に見たり、彼女が創作活動に集中できるよう、家事を手伝ったりした。そして、佐野俊英氏にも連絡を取り、感謝の言葉を伝えた。

暗視カメラの映像は、僕の疑念を満たすどころか、新たな事実、そして美咲の心の痛みを露呈させた。しかし、その映像は同時に、僕たちに新たな未来を開いてくれたのだ。  僕たちは、互いを理解し、支え合うことで、より強い絆を築き上げた。そして、その絆は、これからも続いていくだろう。  暗視カメラは、ゴミ箱に捨てられた。二度と使わないと、そう誓った。