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オリジナルのチビキャラがちょっとだけ動きます。

短かつ無音です。

## Hunakoと雨上がりの虹

雨上がりのアスファルトは、昼間の熱気をまだ少しだけ残していた。水たまりには、ビルの輪郭がぼやけて映り込み、時折吹く風に揺らめいている。そんな都会の片隅で、Hunakoは小さく跳ねた。

Hunakoは、高さ10センチにも満たない、デフォルメされた女の子の姿をしていた。丸くて大きな瞳、ちょこんとついた鼻、そしていつも少しだけ微笑んでいる口元。頭には大きなリボン、短いワンピースはいつも彼女の動きに合わせてふわりと揺れる。Hunakoは喋らない。音を立てることもない。ただ、そこに「いる」。

今日は珍しく、雨が上がった。昨日まで降り続いた梅雨の雨は、Hunakoが住むオフィスビルの裏庭をまるで湖のように変えてしまっていた。Hunakoは水に弱い。だから、雨の間はずっと、小さな石垣の隙間でじっとしていた。

雨が上がったことに気づいたのは、鳥のさえずりを聞いたからだった。いつもは喧騒に紛れて聞こえない鳥の声が、今日はやけにクリアに響いていた。Hunakoは石垣から顔を出し、空を見上げた。

空はまだ少しどんよりとしていたけれど、雲の切れ間から太陽の光が射し込んでいる。そして、その光を受けて、空には大きな虹がかかっていた。赤、橙、黄、緑、青、藍、紫。七色の光がアーチを描き、都会の風景をまるで絵画のように彩っていた。

Hunakoは、その虹に目を奪われた。彼女にとって、虹を見るのは初めてのことだった。石垣から飛び降り、ヨチヨチと歩き始めた。目的地は、もちろん虹の麓。

アスファルトの上を歩くHunakoの足取りは、どこかぎこちない。それでも、彼女は止まらない。水たまりを避けながら、時には跳ねるようにして、進んでいく。

道端には、雨に濡れた花が咲いていた。紫陽花、百合、薔薇。どれもHunakoの背丈よりもずっと大きい。Hunakoはそれぞれの花に手を伸ばし、そっと触れてみた。花の香りが、彼女の小さな体を包み込む。

ビルの壁には、雨で落ちかけているポスターが貼られていた。アイドルグループの笑顔、新製品の広告、コンサートの告知。Hunakoはポスターを一つ一つ見上げ、そこに描かれている人や物に、何かを感じ取ろうとしていた。

彼女の周りには、人々が足早に行き交う。スーツを着たサラリーマン、買い物袋を抱えた主婦、イヤホンで音楽を聴いている学生。誰もHunakoに気づかない。彼女は、まるで世界の片隅に取り残された、小さな存在だった。

しかし、Hunakoは寂しくなかった。彼女は、自分の世界に満足していた。雨上がりの空気、花の香り、そして、目の前に広がる虹。それだけで、彼女の心は満たされていた。

しばらく歩くと、Hunakoは公園にたどり着いた。公園には、子供たちが遊んでいた。滑り台、ブランコ、シーソー。子供たちの歓声が、Hunakoの耳に心地よく響く。

Hunakoは、子供たちの遊びをじっと見つめていた。彼女は、子供たちと一緒に遊びたいと思った。でも、彼女は喋れないし、音を立てることもできない。彼女は、ただ見ていることしかできない。

すると、一人の女の子がHunakoに気づいた。その女の子は、Hunakoと同じくらいの歳で、ピンク色のワンピースを着ていた。女の子は、Hunakoの前にしゃがみこみ、じっとHunakoの顔を見つめた。

「あなた、だあれ？」

女の子は、Hunakoに話しかけた。Hunakoは、何も答えることができなかった。ただ、女の子の顔を見つめ返した。

女の子は、Hunakoが喋れないことに気づいたようだった。それでも、女の子はHunakoに笑顔を向けた。

「あなた、可愛いね。私、ハナっていうの。あなたの名前は？」

Hunakoは、自分の胸をトントンと叩いた。それは、自分の名前が「Hunako」であることを伝えるサインだった。

ハナは、Hunakoの仕草を見て、嬉しそうに笑った。

「Hunakoちゃん、って言うんだ。可愛い名前ね。私と一緒に遊ぼうよ」

ハナは、Hunakoの手を優しく握った。Hunakoは、ハナの手の温かさに、少しだけ驚いた。

ハナは、Hunakoをブランコに連れて行った。Hunakoは、ブランコに座ることができなかった。ハナは、Hunakoを自分の膝の上に座らせ、ブランコをゆっくりと漕ぎ始めた。

ブランコが揺れるたびに、Hunakoの体は小さく揺れた。風がHunakoの髪を撫で、太陽の光がHunakoの顔を照らす。Hunakoは、目を閉じ、その感覚を全身で味わった。

ハナは、ブランコを漕ぎながら、Hunakoに色々な話をした。学校のこと、友達のこと、好きな食べ物のこと。Hunakoは、ハナの話を黙って聞いていた。言葉は理解できなくても、ハナの気持ちは伝わってきた。

しばらくすると、ハナのお母さんがハナを呼びに来た。ハナは、Hunakoに少し寂しそうな顔をした。

「Hunakoちゃん、ごめんね。もう帰らないといけないの」

ハナは、Hunakoの手を離し、立ち上がった。Hunakoは、ハナの手を離れるのが名残惜しかった。

ハナは、Hunakoに手を振って、走り去って行った。Hunakoは、ハナの背中を見送り、小さく手を振り返した。

ハナがいなくなった後、Hunakoは公園を後にした。彼女は、再び虹の麓を目指して、歩き始めた。

しかし、いつの間にか、空の虹は消えていた。太陽は雲に隠れ、空は再びどんよりとしていた。

Hunakoは、少しだけがっかりした。でも、彼女はすぐに元気を取り戻した。ハナと出会えたこと、一緒に遊べたこと。それが、Hunakoにとって、何よりも大切な宝物だった。

Hunakoは、自分の住むオフィスビルの裏庭に戻った。石垣の隙間に腰を下ろし、空を見上げた。

空には、星が一つも出ていなかった。それでも、Hunakoは満足だった。今日は、特別な一日だった。

Hunakoは、小さく跳ねた。それは、喜びの表現だった。彼女は、これからも、自分の世界で、小さく、そして力強く、生きていく。

そして、いつかまた、美しい虹に出会えることを、信じて。