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民間警察で活躍する早乙女舞は1件の護衛の依頼を受ける。しかし、それは単なる大企業「ディベロ」の御曹司の護衛が真の目的ではなかった。そのディベロで秘密裏に行われているらしい実験を探るため行動する舞とその相棒の高山。

捜査の途中、高山は何者かの策略により失踪してしまう。失踪した高山を探し出し、秘密実験の謎を解明するため、舞は単独で捜査を始める。しかし、その舞にも徐々に黒い影が忍び寄っていた。果たして、ヒロイン:舞の運命は・・・?

## Rising

ネオンが雨に滲む東京の片隅。早乙女舞は、煙草の煙を吐き出しながら依頼書に目を落とした。民間警察『ナイトフォース』に所属する彼女は、その冷静な判断力と卓越した格闘術で数々の難事件を解決してきた。今回の依頼は、大手企業『ディベロ』の御曹司、藤堂悠真の護衛。表向きは誘拐の脅迫があったためという、よくあるタイプの案件だった。

「ディベロねぇ…」

相棒の高山健太がコーヒーを差し出しながら呟いた。彼は、舞とは対照的な明るい性格で、情報収集能力に長けていた。

「どうした？」

「いや、最近妙な噂があってな。ディベロが極秘裏に何か実験をしているらしいんだ。倫理的に問題があるとか何とか」

舞は眉をひそめた。単なる護衛の仕事が、思わぬ方向に発展する可能性が出てきた。

「まぁ、護衛がメインだ。ついでに噂の真相も探ってみるか」

数日後、舞と高山は藤堂悠真の護衛を開始した。彼は、遊び人という評判とは裏腹に、意外にも礼儀正しく、控えめな青年だった。しかし、彼の周囲には常に緊張感が漂っており、舞は違和感を覚えていた。

護衛の合間を縫って、高山はディベロの内部情報を集め始めた。彼は、過去にディベロの研究部門に在籍していた人物に接触し、秘密裏に行われている実験について聞き出そうとした。

その夜、舞と高山はいつものように行きつけのバーで情報交換をしていた。

「やっぱり何かあるみたいだ。遺伝子操作に関する実験で、被験者は…」

高山の言葉が途切れた。突然、店の電気が消え、店内は騒然となった。舞は反射的に周囲を警戒したが、次の瞬間、背後から強烈な衝撃を受け、意識を失った。

気が付くと、舞は見慣れない倉庫の中に倒れていた。身体は拘束され、口には猿轡が噛まされている。激しい頭痛と吐き気を覚えながら、彼女は状況を把握しようとした。

「目が覚めたか、早乙女舞」

声の主は、ディベロの幹部、黒川と名乗る男だった。冷酷な笑みを浮かべながら、彼は舞を見下ろした。

「君には、少しばかり協力してもらいたい」

黒川は、ディベロの秘密実験について語り始めた。それは、人間の潜在能力を極限まで引き出すことを目的とした、非人道的な実験だった。被験者は、貧困層や犯罪者など、社会から見捨てられた人々で、実験の過程で多くの命が失われていた。

「高山はどこだ？」

舞は必死に抵抗したが、黒川は動じなかった。

「高山君は、少しばかり邪魔だったからね。今は、君と同じように、ディベロのために働いてもらっているよ」

舞は絶望した。高山がディベロの策略に嵌められたのだ。怒りと悔しさがこみ上げてきたが、今は冷静さを保つしかなかった。

数日後、舞は黒川の監視下を逃れ、単独で高山を捜索し始めた。彼女は、高山が残したわずかな手がかりを頼りに、ディベロの施設へと潜入した。

施設内は、厳重な警備体制が敷かれていた。舞は、培ってきた格闘術と潜入技術を駆使し、警備の目を掻い潜りながら奥へと進んだ。

ついに、舞は実験室に辿り着いた。そこには、変わり果てた高山の姿があった。彼は、機械に繋がれ、意識朦朧としていた。

「高山！」

舞は叫んだ。しかし、高山は反応しなかった。

「残念だったな、早乙女舞。高山君は、もう君の知っている高山健太ではない」

黒川が現れた。彼は、高山に特殊な薬物を投与し、洗脳していたのだ。高山は、舞に向かって襲い掛かってきた。

舞は、必死に高山の攻撃をかわしながら、彼を正気に戻そうと試みた。しかし、高山は完全に洗脳されており、舞の言葉は届かなかった。

やむを得ず、舞は高山を昏倒させた。彼女は、涙を堪えながら、高山をその場に残し、黒川との決着をつけるために走り出した。

黒川は、施設の最深部に位置する研究室で待っていた。彼は、不敵な笑みを浮かべながら、舞に銃を向けた。

「君のような存在は、ディベロにとって邪魔なんだ。ここで消えてもらう」

舞は、黒川の銃口を見据え、静かに息を吸い込んだ。彼女は、高山の仇を討ち、ディベロの悪事を暴くために、最後の戦いに挑んだ。

激しい銃撃戦の末、舞は黒川を倒した。しかし、彼女もまた、深手を負っていた。

舞は、満身創痍の身体を引きずり、高山の元へと戻った。彼女は、高山を抱きしめ、必死に彼の名前を呼んだ。

「高山…聞こえるか？私だ、舞だ」

高山は、かすかに目を開けた。彼の瞳には、一瞬だけ、かつての温かい光が宿った。

「舞…さん…」

高山は、そう呟くと、再び意識を失った。

舞は、高山を抱きしめ、静かに涙を流した。彼女は、高山を救うために、最後まで諦めないと誓った。

数日後、舞は高山と共に、ナイトフォースに戻っていた。高山の意識はまだ戻らないままだったが、彼は生きている。

ディベロの悪事は、舞の告発によって白日の下に晒され、関係者は逮捕された。しかし、舞の戦いは終わらなかった。彼女は、高山の意識を取り戻すために、あらゆる手段を尽くしていた。

そして、ある日。

高山の病室で、舞はいつものように高山の手に触れ、語りかけていた。その時、高山の指が、かすかに動いた。

舞は息を呑んだ。彼女は、高山の瞳を見つめ、静かに彼の名前を呼んだ。

「高山…」

高山は、ゆっくりと目を開けた。彼の瞳には、かつての温かい光が戻っていた。

「舞…さん…おかえり」

舞は、涙を堪えながら、高山を抱きしめた。彼女は、ついに、高山を取り戻したのだ。

夕焼けが、病室を優しく包み込んだ。舞と高山は、互いに寄り添いながら、静かに空を見上げていた。

Rising…新たな夜明けが、二人を照らしていた。彼らの戦いは、まだ終わらない。しかし、彼らは決して諦めない。なぜなら、彼らの心には、正義と希望の光が宿っているからだ。