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【後編】『たゆたうは　稲荷原流香と　七不思議　春は訪れ　解く時来たる』


学院七不思議の『あかずの部室』を見事退治してから1ヶ月以上が過ぎていた。


稲荷原流香は他の学院七不思議を解き明かすべく動き回っていていたものの、怪異や事件などの情報を

全く得る事ができず,なんら進展してはいなかった。


そんなある日、学院七不思議の一つである『秀才の机』を使った生徒が二人も倒れたという情報が

もたらされる。流香達が調査し始めると、小学生の頃、流香がリーダーとして怪異などを退治していた

『言実怪異バスターズ』の一員として行動を共にしていた南宮愛奈と湯梨浜萌衣と再会する。


その再会が始まりであるかのように、次から次へと他の学院七不思議の話が舞い込んできて、

少女達は必然的に、運命的に過去と学院七不思議と向き合う事になるのであった……。

## 後編：たゆたうは 稲荷原流香と 七不思議 春は訪れ 解く時来たる

桜の淡いピンクが、学院の古びた石造りの壁を彩る。一ヶ月前、学院七不思議の一つ「あかずの部室」を解決した稲荷原流香は、新たな謎解きに挑む日々を送っていた。しかし、情報は乏しく、手掛かりは掴めないまま、春風が頬を撫でるばかりだった。

流香は、古びたノートに書き連ねた七不思議のリストを眺めていた。一つずつ、解決していくつもりだった。だが、「呪いのピアノ」「血染めの廊下」「消える階段」「影の教室」「泣く肖像画」「永遠の試験」…どれも、まるで沈黙を守るかのように、彼女に情報を寄こさない。

そんな膠着状態を打破する出来事が、突如として起こった。

「流香さん、大変です！」

親友であり、いつも流香をサポートする、冷静沈着な黒川千尋が、慌てた様子で駆け込んできた。

「『秀才の机』…二人が倒れたんですって…」

「秀才の机」それは、図書館奥に置かれた古びた机。その机で勉強した生徒は、一様に高熱と激しい頭痛に襲われ、数日間意識不明になるという噂があった。流香は、その噂を単なる都市伝説程度にしか捉えていなかったが、まさか現実のものになるとは。

早速、千尋と共に図書館へと向かった流香は、そこで予想外の再会を果たす。

「流香…？」

聞き覚えのある優しい声が、彼女の耳に届いた。振り向くと、そこに立っていたのは、小学生の頃、「言実怪異バスターズ」として共に怪異退治に奔走した、南宮愛奈と湯梨浜萌衣だった。二人は、大学進学のため、この学院に入学していたのだ。

愛奈は、活発で明るい性格は変わらぬものの、少し大人びた印象を受けた。一方の萌衣は、以前と変わらず、静かで観察眼鋭い少女だった。

「久しぶりだね、流香！」

愛奈の笑顔に、流香は懐かしい温かさを感じた。あの頃一緒に過ごした、無邪気な日々が蘇る。

「あの…実は、私たちも『秀才の机』について調べていたんです」と萌衣が口を開く。「私たちが見た机は…普通の机とは違いました。何か、異質なエネルギーを感じました…」

その言葉に、流香は背筋を伸ばした。単なる噂ではない、何かが確かに「秀才の机」に潜んでいる。

再会をきっかけに、まるで堰を切ったように、他の七不思議に関する情報が流香のもとに集まってきた。

「呪いのピアノの音色が、最近、より不気味になっているらしい…」

「血染めの廊下で、奇妙な影を見たという生徒がいる…」

「消える階段の先で、白い服を着た少女を見た…」

「影の教室から、子供の泣き声が聞こえるようになった…」

「泣く肖像画の涙が、血のように赤くなった…」

「永遠の試験…受かったはずなのに、試験会場に戻ってしまったという生徒がいる…」

かつてはバラバラに囁かれていた七不思議が、まるで繋がりを持つように、次々と事件を引き起こしている。

愛奈と萌衣の協力も得て、流香たちはそれぞれの七不思議を調査し始めた。愛奈の行動力と、萌衣の鋭い分析力、そして流香の経験と知識が、奇跡的に噛み合った。

「秀才の机」の異質なエネルギーは、学院の地下に潜む、古の怨念が原因であることが判明した。その怨念は、他の七不思議にも影響を与え、悪化させていたのだ。

解決策は、学院の創設者によって封印された、地下深くに眠る「七つの結界石」を集めることだった。それぞれの結界石は、七不思議の謎を解く鍵であり、怨念を鎮める力を持っていた。

少女たちは、古文書を頼りに、学院の隠された通路を探し、一つずつ結界石を発見していく。時には危険な罠に遭遇し、時には不思議な現象に遭遇しながらも、三人は協力し、困難を乗り越えていった。

最後に辿り着いたのは、学院の創設者の墓所だった。そこには、七つの結界石が輝く祭壇があり、怨念の根源が眠っていた。

流香たちは、それぞれの七不思議を象徴するアイテムを使い、七つの結界石を祭壇にセットした。すると、地響きと共に、怨念は消え去り、学院は静寂に包まれた。

桜の花びらが舞い散る中、三人は安堵の息を吐き出した。

あの頃の「言実怪異バスターズ」は、三人の友情の証だった。そして、今、再び集まった三人は、それぞれの成長を遂げ、強くなっていた。

春は訪れ、七不思議は解かれた。しかし、少女たちの冒険は、ここで終わるわけではない。新たな謎、新たな出会いが、彼女たちを待っているに違いない。未来への希望を胸に、少女たちは、学院の春の陽光の下で、微笑んだ。