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## 錆びた鎧とデジタルエロス

古びたアパートの一室。蛍光灯の薄暗い光が、埃っぽい部屋全体をぼんやりと照らしている。大学生の健太は、使い古されたパソコンの画面を食い入るように見つめていた。

「姉騎士エロトラップ…落とし穴に落ちて肛門に棒がぶっささる…」

タイトルを読み上げる声は、まるで懺悔のようだった。数日前からネットの海を漂流し、偶然この刺激的な単語の羅列にたどり着いたのだ。好奇心と背徳感が、健太の心を激しく揺さぶっていた。

Ci-enというサイトのリンクが貼られていた。月額850円のプランに加入すれば、この動画を含むエッチな動画が手に入るらしい。必要な時だけ加入して、すぐに無料プランに戻せば、実質850円で済むという。

健太は葛藤した。今まで、こういった露骨なエロ動画に手を出したことはなかった。しかし、画面に映る挑発的な文字と、心の奥底に渦巻く抑えきれない衝動が、健太の理性的な思考を麻痺させていく。

「850円…ジュース数本分か…」

健太は、震える指でクレジットカードを取り出し、画面の指示に従って入力していく。決済が完了し、Ci-enのサイトへとログインした。

そこには、無数のサムネイル画像が並んでいた。どれもが刺激的で、目を逸らしたくなるようなものばかりだ。健太は、お目当ての動画を探し出し、クリックした。

簡素な動画プレイヤーが起動し、ロードが始まった。健太は、息を呑んで画面を見つめた。

しばらくして、動画が始まった。中世風の衣装を身につけた女性が、森の中を歩いている。女性は騎士の鎧を身につけているが、その姿はどこかぎこちない。

「これは…コスプレか？」

健太は、少し冷静になった。動画のクオリティは、想像していたよりもずっと低かった。カメラワークは不安定で、映像も粗い。

動画は、お目当てのシーンへと進んでいく。女性騎士が落とし穴に落ち、お尻に棒が突き刺さる。しかし、その描写は露骨というよりも、どこかコミカルだった。

健太は、複雑な気持ちになった。興奮と失望が、交互に押し寄せてくる。期待していたほどの刺激はなく、むしろ、虚無感に近い感情が胸を締め付けた。

動画を見終わった後、健太はぼんやりとパソコンの画面を見つめた。850円を支払って手に入れたのは、安っぽいコスプレと、チープなエロだけだった。

「俺は何をやっているんだ…」

健太は、自嘲気味に呟いた。これまで、真面目に勉強し、アルバイトに精を出してきた。大学卒業後は、安定した企業に就職し、平凡な人生を送ることを夢見ていた。

しかし、心の奥底には、常に何か足りないという感覚があった。退屈で、刺激のない毎日。健太は、その空虚感を埋めるために、手軽な快楽に溺れてしまったのだ。

健太は、Ci-enのサイトからログアウトし、クレジットカードの利用明細を確認した。850円の支払い履歴が、小さな罪のように画面に表示されていた。

健太は、パソコンを閉じ、部屋の電気を消した。暗闇の中で、彼は自分の心の声に耳を澄ませた。

「本当に欲しいものは、こんなものではないはずだ…」

翌日、健太は大学の図書館へと向かった。彼は、これまで読んだことのないジャンルの本を手に取り、読み始めた。歴史、哲学、文学…未知の世界が、健太の心を刺激した。

図書館に通ううちに、健太は新しい趣味を見つけた。彼は、学生サークルに参加し、仲間たちと語り合うようになった。そこで出会った人々は、それぞれが独自の価値観を持ち、自分の興味のあることに情熱を注いでいた。

健太は、彼らとの交流を通して、自分の世界が広がっていくのを感じた。これまで、彼は他人とのコミュニケーションを避けてきた。しかし、サークルの仲間たちは、健太の心を開かせ、積極的に社会と関わるように促した。

数ヶ月後、健太はすっかり変わっていた。彼は、以前のような無気力な日々を送ることはなくなった。大学の授業にも積極的に参加し、将来の目標も見つけようと努力していた。

あのエロ動画のことは、今では遠い昔のことのように感じられた。健太は、過去の自分を振り返り、少し恥ずかしく思った。

「あの時は、本当に迷っていたんだな…」

健太は、窓の外に広がる夕焼けを眺めた。空は、燃えるような赤色に染まっていた。

彼は、自分の人生を、もっと豊かにしたいと強く思った。過去の過ちを糧に、未来へと進んでいく。

健太は、深い息を吐き出し、新しい一歩を踏み出した。デジタルエロに溺れた過去は、彼にとって、成長のための糧となったのだ。

錆びた鎧を脱ぎ捨て、彼は、自分の道を歩き始めた。それは、決して平坦な道ではないかもしれない。しかし、彼は、自分の力で、未来を切り開いていくと決意した。

そして、たまに、あの「姉騎士エロトラップ」のタイトルのことを思い出すと、健太は苦笑いする。それは、若気の至りと、ほんの少しの背徳感と、そして、自分の成長を思い出させてくれる、ほろ苦い記憶なのだ。