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縦長動画でスマホで見やすい
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## 漆黒の迷宮

薄暗い路地裏、雨上がりのアスファルトが街灯の光を鈍く反射していた。男は黒いマスクで顔を覆い、視線を彷徨わせながら、スマートフォンを握りしめていた。指先は震え、額には脂汗が滲んでいる。彼は、SNSに流れてきたある広告に釘付けになっていたのだ。

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安っぽいフォントで書かれたその文字は、男の心の奥底に潜む欲望を掻き立てた。クリックするべきか、否か。良心の呵責と、抑えきれない好奇心が、彼の心を激しく揺さぶる。彼は何度も深呼吸を繰り返し、周囲を警戒するように見回した。誰もいない。ただ、雨上がりの湿った空気と、遠くで聞こえる車の音が、男の鼓動をさらに加速させる。

「…たった、100円か」

彼は呟いた。100円なら、自販機で缶コーヒーを買うくらいの金額だ。後悔するかもしれない。だが、この誘惑に抗える自信はなかった。彼は意を決し、震える指で広告をタップした。

暗転した画面の先に現れたのは、簡素な決済画面だった。クレジットカード情報を入力する箇所はない。代わりに、プリペイドカードの番号を入力する欄があった。男はコンビニに駆け込み、迷うことなく1000円分のプリペイドカードを購入した。

帰宅後、彼は自室に籠り、再びスマートフォンを手に取った。プリペイドカードの番号を入力し、決済を完了させる。画面は暗転し、やがて縦長の動画が再生された。

映像は酷い手ブレで、何が映っているのか判然としない。しかし、すぐに理解した。それは、雑然とした部屋の一角を映した映像だった。そこに、黒髪の女性が、黒いマスクを着けて立っている。彼女は、明らかに緊張している様子だった。

映像は、まるで隠し撮りのように、彼女の姿を捉えている。彼女の白い肌は、薄暗い照明の下で異様なほどに際立っている。そして、男の視線は、彼女の胸元に釘付けになった。

動画は、女性の胸を執拗にクローズアップする。手ブレが激しく、何が起きているのかよくわからない。しかし、女性の表情から、彼女が苦痛を感じていることがわかる。彼女は目を閉じ、歯を食いしばり、必死に耐えているようだった。

男は、映像に見入っていた。罪悪感と興奮が、彼の心の中で渦巻く。彼は、自分が一体何を見ているのか、理解している。これは、誰かの苦痛を娯楽として消費する、醜悪な現実の一端なのだ。

しかし、彼は、画面から目を離すことができなかった。映像は、まるで悪夢のように、彼の心を蝕んでいく。彼は、自分が深淵を覗き込んでいることに気づいた。そして、深淵もまた、彼を見つめ返しているのだ。

動画は、数分で終わった。画面は暗転し、再び決済画面に戻る。男は、まるで夢から覚めたように、呆然とスマートフォンを見つめていた。

彼は、自分が犯してしまった罪の重さに気づいた。彼は、100円という安価な代償で、誰かの尊厳を傷つけてしまったのだ。そして、彼は、その事実に打ちのめされた。

彼は、急いで動画を削除した。しかし、彼の心に刻まれた映像は、決して消えることはないだろう。彼は、これから先、ずっとこの罪を背負って生きていくことになるのだ。

彼は、自分の愚かさを呪った。そして、同時に、この醜悪な現実を作り出した社会に、深い絶望を感じた。

数日後、彼は、あの動画が流れてきたSNSのアカウントを削除した。そして、二度と、そのような誘惑に負けないことを誓った。しかし、彼の心には、あの映像が、漆黒の迷宮のように、深く刻み込まれている。彼は、いつまでも、その迷宮の中で彷徨い続けるのだろう。

彼は、再び路地裏を歩いていた。あの雨上がりの日とは違い、空は晴れ渡り、太陽がアスファルトを照らしている。しかし、彼の心は、依然として雨模様だった。彼は、黒いマスクを外し、空を見上げた。彼の瞳には、深い悲しみが宿っていた。

彼は、この街の片隅で、罪を背負いながら生きていく。彼は、いつか、この罪を償うことができるのだろうか。彼は、希望を求めて、歩き続けた。しかし、彼の行く先には、漆黒の迷宮が、口を開けて待ち構えているのだ。

そして、彼は知っていた。迷宮は、決して出口を見せてはくれないことを。彼は、永遠に、その中で彷徨い続けることを。彼は、絶望の中で、ただ、祈るしかなかった。いつか、この悪夢から解放される日が来ることを。

彼は、今日も、漆黒の迷宮を彷徨う。そして、いつまでも、光を見つけることができない。